対談:『地域エコノミスト 藻谷浩介 X 村山祥栄』 (京都党 活動報告)

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対談:『地域エコノミスト 藻谷浩介 X 村山祥栄』

対談:『地域エコノミスト 藻谷浩介 X 村山祥栄』

対談:『地域エコノミスト 藻谷浩介 X 村山祥栄』

「ムードに騙されるな!データにこそ真実が宿る」

村山祥栄
いつもお世話になっております。私自身、「デフレの正体」を初めて読んだ時の衝撃は今でも忘れられません。それ以来、すっかりファンになり、今では藻谷経済学の弟子を勝手に自認しております(笑)そして、昨年からは京都党の政策顧問もお願いしており、すっかりお世話になりっぱなしです。
藻谷浩介
私はとにかく地域を自分の足で歩き、地域で本当に頑張る人を応援したいという思いでずっとやってきました。地方へ行くと、心正しい活動を粘り強く続けている方が沢山います。なかなか成果が出なくとも、決して歩みを止めない、そういう方達と一緒に地方を盛り上げていきたいわけです。京都党はまさにそうした方々の集まりです。
村山祥栄
恐縮です。以前、公務員の給与改定に京都党だけが反対して、総スカンを喰らった。いよいよ我々の考えは間違ってるのかと不安になったときに、先生が一喝して下さいましたよね。「他党は何を考えてるんだ」って。
藻谷浩介
正しいものは正しい。本当かウソかは民主主義では決まらない。日本人は思い込みで動くので、特にこの傾向が顕著ですが、往々にして少数派のほうが良識派で正しいことを言っていますよね。
村山祥栄
あのときは本当に励みになりました。藻谷さんの場合はデータを軸に真実を見分けて、結論を導き出すという点で全くムードに流されないですね。
藻谷浩介
物事と向き合うには、徹底してリアリストでないといけないと思います。地に足ついてモノを考えなければ、いずれ必ず現実の方に裏切られます。問題は常に足元にあるんです。ムードってのが、一番怪しい。 『イメージ』『空気』と『事実』とは違う。例えば、殺人事件は増えていると思います?減っていると思います?
村山祥栄
増えてるんじゃないですか?
藻谷浩介
減っているのです。激減です。昭和30年頃、年間3000件、一日8件。2016年は年間847件ですよ。 やれ、親が子供を殺したとか、PTA会長が子供を殺したとか、そういうニュースばかりが流れるから、みんな殺人が増えていると思ってしまう。でも実態は違うわけです。ついでに言うと、交通事故での死亡者の方は5分の1に減っています。昔は余りに事件が多いから報道されなかったけれど、今は件数が少ないのでむしろ報道されるのです。
村山祥栄
分かり易いですね。これが数字から見える真実ですね。
藻谷浩介
ちなみにセコムの契約件数は増加の一途ですけどね(笑)ありとあらゆる犯罪が、、、去年は過去最低。これが事実です。表層的なことと実態の乖離です。
村山祥栄
確かにそれは言えています。京都は文化庁がやってくるということで沸いていますが、文化庁の職員は実は二百数十人しかいない。それほどの経済効果はない。観光客が急増していますが、これも京都市の施策の結果ではない。でも、「市長の成果だ―」というわけです。これもイメージですね。
藻谷浩介
安倍首相と一緒です。権力者っていうのはそういう生き物なのでしょうか。例えば、最近、学生の就職率が上がって有効求人倍率の数字がどんどん良くなっていますね。これは「安倍政権のおかげ」と言っていますが、真相は簡単で、団塊世代の退職を、その6割しかいない新卒者の就職では補えていないから。首都圏ではこの5年で人口が51万人増えていますが、14歳までが2%(7万人)減、15~64歳までが3%(75万人)減。逆に65歳以上は18%、134万人も増えている。そのうち80歳以上が52万人増!単純に高齢者が増えて若者が減っているのですから、当然人手不足になる。若者は簡単に就職できる。それは政治の成果じゃない。そうなるべき現実があるんです。
村山祥栄
仰るとおりですね。ついでにいうと、ブラック企業が問題視されていますが、著しい働き手の減少は労働環境を改善させる流れになってきていますよね。福利厚生や労働環境を改善しないと社員が採用できなくなってきたわけで、この問題も政策の力ではなく、経済の原理として必然的な流れだと思います。そのへんがごちゃ混ぜになっている気がします。
藻谷浩介
観光に話を戻しますが、観光客も、何もしなくても~というと語弊がありますが、これからまだまだやってきますよ。世界の観光人口が急増しているのですから。特に、まだまだ中国人は増えます。韓国人は昨年一年間だけで9.9人に1人が日本に来ました。台湾は5.6人に1人、香港は4人に1人です。それに比べて、中国人はまだ216人に1人しか来てない。もっと増える可能性は極めて高いわけです。
村山祥栄
そういった前提に立って京都も先手を打った観光政策を組まねばならない。そういうことですね。
藻谷浩介
数が増えることに伴う問題をどう減らして、単価をどう上げるか。観光客の数だけに依存して地域経済を回すのは非常にリスクが高い。パリはテロがあった途端、あっという間に客が来なくなりました。北朝鮮の危機が騒がれておりますが、万が一危機が本格化すると一番打撃を受けるのは観光都市・京都ですよ。
村山祥栄
確かに。京都も以前鳥インフルエンザの影響で観光産業が大打撃を受けました。どこもかしこも閑古鳥が鳴いて。
藻谷浩介
北朝鮮の問題はそんなレベルじゃありませんよ。ミサイル一発で京都の観光産業は1年以上もボロボロになる。外国人観光客が沢山来たら文句を言って、今度は観光客が来なくなって泣きをいれるようなことにならないようにしなければなりません。
村山祥栄
鋭いご指摘(笑)確かに、観光客は迷惑だとみる向きがないわけではありません。皆さん、観光客で街が潤っているという実感がないですからね。
藻谷浩介
そりゃそうですよ。観光客にいくら土産物が売れてもそのお金は京都から出ていくんですから。大体、京都の土産物の原材料のどれだけが京都産でしょうか。大切なことは、京都の材料を使って、京都で人件費をかけて生産されて、それが売れて初めて街が潤うわけです。それが、丹波大納言を使わず特選!十勝産小豆使用なんていう京菓子を売っている。そんなやり方では、地域は潤いません。
村山祥栄
それはその通りです。中国人が大挙して京都に来て、外資のホテルに泊まって、中国人が経営する中国人向け中華料理屋で食事をして、マツモトキヨシ、高島屋、ラオックスで買い物をする。これじゃ、一円にもなりません。
藻谷浩介
分かっているのなら早く手を打たなきゃだめですよ。ニセコに酒まんじゅうというのがありますが、餡も粉も酒も全部ニセコ産です。だから一個売ったら全部ニセコに落ちるわけです。京都はフィレンチェと姉妹都市ですが、イタリアもそうです。イタリアに行くとイタリア料理を食べる。オリーブオイルもパスタもチーズも全部イタリア産ですよ。で、帰国してからもみんなイタリア産のパスタを食べるわけです。
村山祥栄
イタリアの話が出たので、少し世界的なレベルでお話を伺いたいのですが、日本にとって人口減少が大きな問題になっていることは、ご高著「デフレの正体」が出たことがきっかけで、広く認知されるようになりました。世界的な人口動態はどうでしょうか。
藻谷浩介
まず、欧州は移民の流入にもかかわらず現役世代の数が減り始めています。アメリカも遂に子供の数が減り始めました。ただ、欧州は人口急増中のアフリカや中近東、アメリカは同じく子供の多いメキシコやカリブ海諸国から、どんどん不法移民が入ってくる。ところが、もう東アジアや東南アジアでは子供は増えていないのです。中国、韓国、台湾だけでなく、タイやベトナムでも少子化が始まり、目立った人口増加国はフィリピンとインドネシアぐらいものです。ですから日本への移民流入圧力も、欧米とは比較にならず弱いのです。
村山祥栄
なぜアジアだけが少子化なのでしょうか。
藻谷浩介
これは日本の影響が大きいと見ています。日本と欧米とは、周辺の途上国への接し方が決定的に違っていました。欧州はアフリカや中近東を植民地化し、言葉や教育まで支配したため、今でも旧植民地から旧宗主国に人材や消費を吸い上げる構造が続いています。米国は、周辺を軍事的に植民地化したわけではないものの、安く原料を買い、加工品を高く売りつけ、いわば経済的な植民地にすることで搾取しました。これに対して日本は、戦争で植民地を失ったためにアジアを支配する構造を持たず、逆に70年代後半から韓国、台湾、中国、東南アジアへと工場を移転させていくことで、現地の経済を豊かにしてきました。だからアジアはアフリカなどと違い、日本の後を追いかけて順次経済発展し、そのために外国にまで出向かずとも国内で食べていける中流層が増えてきたのです。
村山祥栄
なるほど。良いのやら悪いのやら、難しいですね。加えて中国も高齢者急増で、不満を国威発揚で外へ向け、結果、反日感情が高まるという全く違う要素も周辺国の政情不安を高めている。国内ではヘイトスピーチ、韓国なんかでは世界に向けて慰安婦像の設置を着々と進めています。このアジアとどう向き合うかという課題も国家レベルで大変重要な問題ですね。
藻谷浩介
それを考える上で、貿易収支の話をしなければなりません。日本で何がおきているのか。
村山祥栄
日本がどこの国から儲けて、どこへお金を払っているかという問題ですね。日本は資源の少ない加工貿易国ですから、これが生業のもとになるわけですね。
藻谷浩介
そうです。意外とこれが知られていない。日本の大のお得意様、要は最も儲けさせてもらっている国はアメリカで、2015年でいえば日本が14兆円の黒字です。対して大赤字なのが中東で7兆円のマイナスです。あとはそれほど突出した相手はいませんが、中国を筆頭に対アジア新興工業国はほぼ黒字、対ドイツ、イギリス、オランダも大きな黒字。中東以外に日本が赤字なのはインドネシア、マレーシア、ロシア、オーストラリアといった、石油、天然ガス、石炭、ウランの産出国。それに、食べ物と観光が強いフランス、イタリア、スイス、スペインといったヨーロッパの一部の国に対しても赤字ですね。
村山祥栄
つまり、アメリカや中国、韓国、台湾などは日本経済にとって上得意様で、これらの国とうまくやっていかないと経済は成り立たない。つまり飯が食えなくなるということですね。
藻谷浩介
それが実態だということです。日本人総評論家で好きなことを言っているけど、こういう根本的なことを意外と知らずに国際問題を論じている人が多すぎる。多年にわたって日本が儲けているという実態を踏まえると、好き嫌いとか、いい悪いじゃなく、大人の関係を作っていくしかないわけです。数字を確認しなくてはいけないのは、京都だってそうです。
村山祥栄
京都もですか。
藻谷浩介
村山さんに言うのも何ですが、2010年から2015年の間で、京都市の人口推移はどうなっているか。総人口は、5年で1200人増えました。ところが年齢別に中身を見ると、0~14歳は5%減、15歳から64歳までの人口も5%減。このペースでいけば、あと100年で京都の子供と64歳以下ははいなくなる。増えたのは65歳以上が16%増えたわけですね。
これが続けばもっと家が余る。医療費は増える。大変なわけです。消費も減るところ、京都はその部分を外国人観光客の消費で埋めています。だからこそ、これで観光産業が打撃を受けたら京都は大変なことになります。だから、京都の問題は日本の政治課題と直結しているといえます。そういう視点でも地方から声を上げてほしいと思うのです。
村山祥栄
なるほど。地方だけ見ていてはだめだと。ちゃんと地方からの視座をもって国政を見るべきですね。あとは、確認せずに思い込みで物事を判断しないこと!ですね。頑張ります。本日はありがとうございました。
藻谷浩介
こちらこそありがとうございました。地域政党も大変ですが、地域がしっかりしない国に、しっかりした国政はありません。どうか頑張ってくださいね。